サブカル昆虫文化論

◎内容紹介

現代サブカルチャ―で描かれる虫たちを昆虫学専門家の視点から考察!
『万葉集』で、すでにコオロギやセミが題材と詠まれており、江戸期の俳句などにも虫は登場、明治維新後は庶民のあいだで鳴く虫の飼育が大流行した。そして、現在。
アニメやゲーム、特撮、漫画などのサブカルチャ―作品の中にも様々な虫が描かれている。

「虫とヒーロー」「虫を愛でるヒロイン」「背景としての虫たち」……。神話の時代から続く日本人の昆虫観をサブカル作品から読み解く!

 

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紀伊國屋 丸善&ジュンク堂書店&文教堂 旭屋書店

発売:2021 / 12 / 7
ISBN978-4-88181-883-1
四六判
296ページ
1,980円 (本体:1,800円)
編著:保科英人
共著:宮ノ下明大、福富宏和

 

◆著者略歴

保科英人(ほしな・ひでと)
昭和47年生まれ。平成12年九州大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。
現在、福井大学教育学部教授、日本甲虫学会和文誌編集委員長。
専門:文化昆虫学、科学史、土壌性甲虫分類学。
著書:『大衆文化のなかの虫たち』(共著)論創社、『近代華族動物学者列伝』勁草書房、『「文化昆虫学」の教科書』(編著)八坂書房、ほか。

宮ノ下明大(みやのした・あきひろ)
昭和39年生まれ。平成5年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了、博士(農学)。
現在、国立研究開発法人 農研機構主席研究員。法政大学兼任講師。都市有害生物管理学会会長。
専門:応用昆虫学、文化昆虫学。
著書:『文化昆虫学事始め』(共著)創森社、『大衆文化のなかの虫たち』(共著)論創社、『「文化昆虫学」の教科書』(共著)八坂書房。

福富宏和(ふくとみ・ひろかず)
昭和55年生まれ。平成15年名城大学農学部生物資源学科昆虫学研究室卒。
現在、 石川県ふれあい昆虫館学芸員、石川むしの会事務局。日本昆虫学会、日本甲虫学 会、石川県野生動物保護調査会会員。
専門: 昆虫分類学、海浜性昆虫の生態と保 全の研究、昆虫を使った教育普及活動。
著書: 『日本産タマムシ大図鑑』(共著)むし社、『昆虫館はスゴイ!』(分担執筆) repicbook、『昆虫好きを育てるために』(分担執筆)ニューサイエンス社

<本書の内容>

まえがき

第1章 日本人は昆虫とどう向き合ってきたか
     ~神話の時代から敗戦まで~

著:保科英人
1 日本神話における昆虫
2 『万葉集』の昆虫
3 平安貴族の和歌の世界と昆虫
4 民間有識者が活躍した時代の昆虫
5 昆虫飼育が流行した近代
6 変遷する日本人の昆虫愛

第2章 霊として描かれる昆虫

著:保科英人
1 霊性トンボ。『かなめも』は日本神話に回帰したのか?
2 霊としてのホタル
3 悪霊としてのホタル
4 霊性昆虫のトップに君臨するチョウ
5 魂としてのチョウ
6 魔力を媒介するチョウ
7 夢世界と現実世界を繋ぐチョウ
8 人を死の世界へと導くチョウ
9 暗闇を飛ぶチョウ
10 意思を持ったチョウ?
11 現代に引き継がれた古の霊性昆虫観

第3章 アニメーション映画と昆虫

著:宮ノ下明大
1 海外アニメーション映画に観る昆虫主役映画
2 アニメーション制作技術の歴史と昆虫主役映画
3 海外アニメーション映画の主役補佐・脇役としての昆虫
4 日本のアニメーション映画における昆虫

第4章 特撮と昆虫 ~ヒーロー・怪人・怪獣に観る昆虫たち~

著:宮ノ下明大
1 『仮面ライダー』に観る昆虫型ヒーローの変遷
2 『仮面ライダー』に登場した怪人のモチーフ
3 『ウルトラマン』シリーズに登場した昆虫をモチーフとした怪獣
4 蛾がモチーフとなった巨大怪獣『モスラ』
5 日本の特撮作品と昆虫

第5章 カプセルフィギュアと昆虫

著:宮ノ下明大
1 カプセルトイの現状
2 昆虫カプセルフィギュアの特徴
3 実物をリアルに再現したフィギュア
4 意外性を持ったおもしろフィギュア
5 おまけフィギュア
6 カプセルトイにおける昆虫フィギュアと動物フィギュアの違い
7 昆虫のぬいぐるみ あれこれ

第6章 ゲームと昆虫

著:保科英人
1 昆虫文化論にスマホゲーは使いづらい
2 海外の生物学研究者が着目するポケットモンスター
3 シューティングゲームにおける敵キャラとしての昆虫
4 一定のニーズがある嫌悪感をもよおす昆虫
5 ビジュアルノベルゲームのテキストに現れる昆虫
6 ヒロインと虫……もはやテンプレか?
  ① お嬢様や知的タイプは虫が嫌い
  ② 穏やかな虫好き少女
  ③ 幼馴染みとの虫捕り
7 カブトムシと女の子
  ① 恋人たちの出会いを演出するカブトムシ
  ② 少女の背中にひっつくカブトムシ
  ③ 少女に親しみを持たれるカブトムシ
  ④ 儚い命の象徴としてのカブトムシ
8 虫好きに「させられる」ビジュアルノベルのヒロインたち

第7章 アニメと昆虫

著:保科英人
1 ちょっとした背景としての昆虫
2 アニメ世界の昆虫食
3 アニメ世界の赤すぎる赤とんぼ
4 アニメ世界のセミのうんちく話
  ▼ ミンミンゼミ編
  ▼ アブラゼミ編
  ▼ ニイニイゼミ編
  ▼ クマゼミ編
  ▼ ヒグラシ編
  ▼ ツクツクボウシ編
  ▼ ご当地アニメ編
  ▼ 回想シーンで多用されるセミの鳴き声
5 異世界にもコオロギはいる
6 なぜか町にもいるアニメ世界のマツムシ
7 カンタンとマツムシ。『中二病でも恋がしたい!』は
  アオマツムシの特徴を生かし切ったか?
8 アニメの昆虫文化論は虫の鳴き声を中心とすべし

第8章 漫画と昆虫

著:福富宏和
1 手塚治虫の漫画に登場する昆虫たち
  ① 原風景の象徴
  ② 特殊能力の紹介
  ③ 能力付加
  ④ 比喩的表現
  ⑤ 弱者強調
  ⑥ 嫌われもの
  ⑦ 自然の驚異
  ⑧ 輪廻転生
  ⑨ 昆虫標本
  ⑩ 空想の昆虫
2 手塚作品以外の昆虫が登場する事例
3 虫好きとして残念に感じてしまう事例
4 『鬼滅の刃』に出てくる昆虫たち
  ① 昆虫の登場
  ② 蟲柱・胡蝶しのぶ(2巻以降登場)
  ③ 儚い生き物・輪廻転生としての昆虫
  ④『鬼滅の刃』における虫の使われ方
5 漫画に登場する昆虫の科学性

第9章 現代版「虫愛ずる姫君」列伝

著:保科英人
1 元祖・虫愛ずる姫君
2 虫業界は元祖・虫愛ずる姫君をどう評すべきか
3 現代サブカルチャ―の「虫愛ずる姫君」たち
4 小粒感は否めない現代版「虫愛ずる姫君」。
  現代サブカルチャーの限界

第10章 サブカルチャーから見えてくる現代日本の昆虫観

著:保科英人・宮ノ下明大
1 大東亜戦争までのカブトムシとクワガタムシ
2 戦後に来襲した文化的「黒船」のカブトムシとクワガタムシ
3 時代ごとに微妙に変化したホタル観
4 伝統を受け継ぐ一方、フルカラー時代に背景と化した蝶
5 『万葉集』以来の日本人の感性を引き継いだ鳴く虫とセミ
6 物語の登場キャラではなく、季節の風物詩として
  虫を使いたがるのは今も昔も同じ?

あとがき
主要参考文献